1日のスケジュール
私が病棟看護師(日勤常勤)として働いていたときは、夜勤者からの申し送りを受けたあとにカンファレンス、点滴の準備、受け持ちしている患者さんを巡回しバイタルチェック、患者さんの状態に応じて洗髪や清拭、医師の指示に応じて採血や注射、配薬、電子カルテへの記録、夜勤者への申し送りなどを行っていました。
医療機関の場合、看護師がケアを提供する相手はケガや病気を患う患者さんですが、保育園で働く看護師がケアを提供する相手は健康的な子供がメインです。そのため、医療処置はほとんど発生せず、園児たちの感染症の予防や服薬管理といった健康管理を主に行います。
保育園看護師が具体的にどういうスケジュールで動いているのかをイメージしやすいように、私が現在勤めている保育園での1日の流れについてご紹介します。勤める園によって異なる部分もあると思いますので、参考程度にご覧ください。
午前中の業務
出勤したら、動きやすい服装とエプロンを着用し髪を束ねます。髪を束ねないままにしておくと、お世話中に子供たちの目に入ってしまう恐れがあり危ないほか、容赦なく引っ張られて痛い思いをします。
私はコストを考えてずっと眼鏡だったのですが、壊されてしまったという苦い経験があるので、それ以来コンタクトになりました。なるべく子供たちに害のないよう、身につけているものには気をつけたほうが賢明です。
身だしなみが整ったら、保育士さんたちと一緒に朝のミーティング。お休みの子供の確認など、連絡事項を共有します。そのあと、各クラスをラウンドし、登園してきた子供たちの健康状態を確認。午前中に散歩に行く園児たちに上着を着せたり、靴を履かせたりと準備を手伝います。
看護師は基本お散歩には同行しないため、お散歩に出かけている間の時間で、おもちゃの消毒や整理整頓、0歳児クラスの食事の準備や介助などを実施。
散歩から帰ってきたら、園児たちに手洗いうがいを促し、ケガをしている園児がいれば処置を行います。
暑い日であれば、子供たちはたくさん汗をかいているので、必要に応じて沐浴を実施。汗のかぶれやアトピー、あせもなど、園児の肌の状態に合わせて、手で優しく洗ったり、入浴後にクリームやローションを塗布したりします。
0歳児クラスでは、オムツ交換や授乳、バイタルチェック、連絡帳の確認、遊びの見守り、寝かしつけなどを実施。基本的に看護師は0歳児クラスでほとんどの時間を過ごします。
昼食時の業務
昼食時は保育士さんと一緒に食事介助に入ります。離乳食後期の子供に対しては、手づかみ用にカットした野菜を与え、咀嚼や嚥下を観察。興味がないようなら改めて離乳食にする、うまく飲み込めていないようならすりつぶす、といった園児一人ひとりに応じた介助が必要です。
保育士時代から看護師になった今でも、食事の時間は大変な業務の1つです。食べ物を隠す子や投げてくる子…。なんとか食べてくれるよう辛抱強く付き合うことが大切です。
以前、なかなか食事に興味を持ってくれない子供がいました。給食の先生に相談しながらいろいろな形態で食事出すことで、介助に入らなくても自ら食べるようになってくれたことがあります。
「家でも食べてくれずに困っていたので助かりました」とお母さんからとても感謝されたことは今でも良い思い出です。
ただ、私が介助に入ったときは食事に集中してくれるのに、かわいい保育士さんが介助に入ったときはなかなか集中できずにいた子供がいたのは少々複雑な思いでしたが…笑。
食事で一番注意したいのは、やはり食物アレルギーです。アレルギーのある食物が体内に入ることで、蕁麻疹や嘔吐、口の中のかゆみなどの症状が現れることがあります。
最悪の場合、アナフィラキシーショックといって、意識障害や血圧低下を起こすこともあり、その際には救急搬送が必要です。適切な食事内容かどうかを毎回毎回しっかり確認した上で、食事介助を行います。これは保育士さんにも確認を徹底するように口酸っぱく言っています。
また、服薬が必要な園児に関しては、担任の先生と一緒に確認を取りながら与薬を実施。昼食後は、食事の片付けや、歯磨き・排泄のサポートを行います。
お昼寝中の業務
食後はお昼寝の時間です。布団を用意し、園児たちを寝かしつけます。絵本の読み聞かせなどは保育士さんがメインで行いますので、看護師は、呼吸や体位などに問題がないか睡眠時の状態についてチェックを行います。
そのあとは自分の休憩時間です。この間に昼食と休憩を取っています。
休憩時間が終わったら、保健だよりの作成や保育ノートの確認・記入、園内の衛生状態の管理、救急箱の中身の点検・補充などを実施。
同じ時間帯で手が空く保育士さんもいるため、園児の健康状態についての相談を受けることがあります。その際には看護師としての視点から適切なアドバイスを行います。
そのほかにも、年間の保健行事として、身体計測や眼科検診、歯科検診などを計画するなど、子供たちのお世話がない時間にできる業務をどんどんこなしていきます。
午後の業務
お昼寝時間が終わったら、園児たちを起こします。必要に応じて排泄の介助や、オムツ交換、授乳などを実施。そのあとは、手洗いを行いおやつの時間です。ここでも食物アレルギーには最善の注意を払います。
そのあとは、帰りの準備などの保育士さんの保育業務のサポートを行いつつ、保健だよりの作成や保育ノートの記入など、園児たちのお昼寝中にできなかった事務処理を行います。
お迎えの時間
お迎えの時間になったら、お昼に確認した保育ノートで気になる点を保護者に聞き、必要に応じて指導を行います。また、保護者の方から健康に関する質問や相談を受けることも多いので、コミュニケーションを取りながら最適なアドバイスを行っています。相談の中で新しいアレルギーの可能性などが判明した場合は、ほかの職員との情報共有も必要です。
まとめ
上記で挙げた業務のほかにも、急病時には園児に付き添い病院へ受診したり保護者へ連絡を取ったり、感染者が出た場合には拡大を防ぐための対策を講じたり、職員の健康管理を担ったり、プール時の健康管理を行ったりと、看護師がやるべきことは多岐にわたります。
医務室や保健室が設置されている保育園であれば、看護師は基本的にそこでお仕事を行いますが、私の園のように設けられていない場合は、看護業務のほかにも、保育士さんと協力しながら子供たちのお世話(保育補助)に積極的に関わる必要があります。
そのため、やるべきことが多く、保育士さんから「◯◯ちゃんの具合が悪い」との連絡が入れば、何をしていてもどこにいてもすぐに飛んでいかなければなりません。
もともと子供好きで、人のためになにかしてあげることが大好きな人間なので、毎日いろいろな経験をさせてもらいながら楽しくお仕事できていますし、保育士時代よりもさらに保護者の方を安心させられるようなケアができていると実感しているのでやりがいがあります。
現在、看護師は一人なのでとっさの判断や適切な処置を私の判断で行わなくてはならず、1日過ぎるのが本当にあっという間です。忙しくも充実している日々を送っています。子どもたちの成長を医療面からサポートできる看護師が、一人でも多く園に常駐する時代が当たり前になればいいなと思います。