仕事内容について
子供たちの健康管理
保育園看護師の主な業務といえるのが園児の健康管理です。健診や視診、触診、服薬介助、病後児保育を行い園児の健康維持に努めます。健康状態をチェックする際、何をされるのか理解できずに怖がる子供も少なくありません。そのため、子供たちに興味を持ってもらえるような工夫も必要です。時には人気のキャラクターを使ったり、歌で興味を引いたりするなど、園児たちの気を引きつつ健康指導を行うことも。最近ではアレルギーを持つ子供が増えてきたので、一人ひとり異なるアレルギーの原因や症状を把握し、保護者と連携しながらケアをする必要性も多くなってきています。また、看護師だけではなく、周りの職員にもアレルゲンの情報共有を行わなければなりません。
また、園児がケガや発熱をした時の応急処置も行います。採血や点滴などの医療行為は保育園内で行うことはできません。そのため、必要な場合には保育園と連携している地域の病院へ搬送して対応します。医療行為が必要かどうかは、保育園看護師の判斷が必要です。
また、保育園では子供たちが長い時間を集団で過ごし、食事や遊びなどを通してお互い接触する機会が多いので、感染症の予防も保育園看護師が気をつけなければならない仕事の一つになります。手洗いやうがいなどの基本的な対策以外にも、子供たちへの健康教育や衛生管理も必要です。普段から子供たちをよく観察し、異常があった場合には早期発見できるようにしなければなりません。
食物アレルギーへの対応
最近多くなってきている食物アレルギーを持つ子供たち。アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー疾患もありますが、年々増加していると言われているのが食物アレルギーです。東京や大阪などの都市部においては、2人に1人の割合で何かしらのアレルギーを持っているといったデータもあるようです。
住環境や食生活、大気汚染などの生活環境の変化が原因とされているため、保育園でも園内の生活環境を整える努力をしています。しかし、レベルも対象品目も一人ひとり異なる食物アレルギーへの対応は慎重を要する問題です。万が一、アレルギーを持つ子供が口にしてしまった場合にはアナフィラキシーショックを起こしてしまう可能性もあります。
保育園での給食時間が一番注意が必要です。アレルギー除去食やお弁当を持参してもらうなどの対応をとっている場合であっても、子供同士で給食をとるときに、隣の子が食べているものが美味しそうに見えて、ついパクっと自分の口に入れてしまうことも。そのため、園によってはアレルギーを持つ子供たちのテーブルを別にするといった対策をとっているところもあります。
入園時に、食物アレルギーの対象品目の確認をしますが、低年齢の子供の場合にはそもそも食べられる食品が少ないです。未摂取の場合はアレルギー症状が出るかどうかわからないこともあるため、食べられるようになった食品を保護者から直接聞き取りをして対応します。また、万が一の場合に備えて、エピペン注射の使用を保育園側で行うといった体制を整えているところも。その場合には、保護者と嘱託医、さらに職員全員の理解を得たうえで、緊急時の使用が認められています。
保育園看護師は、子供たちの健康を守る役目を担っていますが、ときには命を守ることも必要です。食物アレルギーがある場合、薬の取り扱いも生じます。子供に薬を渡してしまう親御さんもいますが、決まった時間に服薬できなかったり、他の園児が過って服用してしまう可能性があり危険です。そのため、園児一人ひとりの投薬管理を徹底させるためにも、薬と一緒に与薬依頼票を提出するなどの対応が各園でとられています。
増え続けている子供たちの食物アレルギーにより、保育園看護師のニーズもさらに上昇傾向に。園によっては、食物アレルギーの勉強会を実施したり、定期的な研修会を開いたりなど、もしものときに備えた取り組みも増加してきているようです。事故が起こってしまう前に、保育園の職員全員の意識を高く持つことも求められています。
ケガした子への対応
子供は元気が一番!というくらい、本当に元気いっぱいな子供たちはいつの時代も多いものです。それゆえにケガは付きもの。顔から転んでしまったり、テーブルに顎をぶつけたり、ドアに指を挟んだり、遊具から落ちたりするなど、ちょっとしたことですぐケガにつながることが多く、ケガする箇所もさまざまです。場合によっては、乳歯がかける、歯茎から血が出るなど、専門の医師の診断が必要なケースもあります。中には、元気が良すぎて脱臼や骨折につながるケガをしてしまう子供も。応急処置で済む場合には保育園看護師が対応できますが、大きなケガをした場合には病院へ付き添って受診しなければなりません。
また、園外保育を行う際にも看護師の同行が求められます。不慮の事故や病気に備えて同行するとともに、事前に行き先にある病院情報の収集をして連携を図れるようにしておくのも保育園看護師の役目の一つです。とはいえ、園児全員を常に見ておくことはできないため、危険だと思う箇所があれば、事故防止用のクッション性のある緩衝材やいたずら防止用のストッパーなどを用いて、ケガの予防に努めます。
予想の範囲内で予防に備えることはできますが、子供同士のケンカは想定外です。すぐに手がでてしまう子や、モノを投げる癖がある子など、一緒に遊んでいる中で生じるケガもあります。よく見られるのは、顔を爪でひっかいってしまったり、おもちゃの取り合いになって持っているモノを投げつけたり、不意に後ろから背中を押したり、前触れもなくお友達の腕を噛んだりなど、特に低年齢の子供の行動は予想がつかないことばかりです。目の前で見ていても、あっという間に事故は起こってしまいます。
このような子供同士の事故からケガにつながってしまった場合、園によりますが、ケガをさせてしまったほうの子の名前は伏せて保護者に伝えられることが多いです。そのため、手を出してしまったほうの加害児の保護者には情報が伝わりません。その理由は、ケガを未然に防げなかったのは園の責任だ、とする保育園側の方針に関係します。また、保護者同士のトラブルを防止するための方法でもあるようです。
保育園看護師は、園児がケガをした場合には早急に処置を行い、適切な対応が求められます。
それ以外のケア
子供たちだけでなく、保護者への健康指導も重要な仕事の一つです。預かっているときの健康状態の管理をするのはもちろん、一人ひとりの園児に適した健康管理の知識を保護者にも伝えていかなければなりません。もし保護者から子供の健康状態に関する質問をされたら、看護師として適切な回答をしなければならないため、不明点があれば医師に確認して保護者の不安を解消するように努める必要があります。
保育園では園医と呼ばれる嘱託医と契約をしていますが、医師が常駐しているわけではありません。そのため、有事の際はスムーズに連携が取れるように、日ごろから気になる点などがあれば相談をし、緊密な連携関係を築いておく必要があります。また、保護者向けの保健だよりを発行するなど、流行りの感染症や子供が罹りやすい病気について、また感染予防に関する知識などの情報を発信していくことも重要です。
さらに、0歳児のクラスを担当する場合には、より注意が必要になります。0歳児はまだ免疫がほとんどなく、体調の変化が起こりやすい時期です。さっきまで元気にニコニコしていたと思ったら、急に発熱したり、機嫌が悪くなったり、ミルクの摂取量が少なかったりなど、ちょっとした変化に気をつけ、より注意深く子供たちをみなければなりません。もし0歳児を担任することになった場合には、保育計画を立てることはありませんが、業務内容を日誌に記録するなどの細かい作業が必要になってきます。
また、子供たちの健康管理だけではなく、保育士や栄養士など、保育園で働く職員の健康管理やケアも必要です。保育園全体が健康管理に気を付けて正常に運営されるように、自身を含めた園内の人全員を病気から守るといった意識をもって看護業務に努めます。